【公立高校入試】出願・志願変更における中学校からの不適切な制約に関して-実際の事例と教育委員会の見解(令和6年度神奈川県公立高校入試)

 2023年12月22日(金)、ステップは神奈川県教育委員会に対し、「公立高校入試の出願および志願変更において、一部の中学校で手続き日程が恣意的に制限されている」ケースについて、申し入れを行いました。
 同様の申し入れは2023年4月6日(木)にも行っており、今回が2回目となります(2023年度入試での状況についてはこちらの記事をご覧ください)

 本稿では、中学校における各種制約の現状、教育委員会担当者の見解等をまとめました。

はじめに

志願変更とは

 神奈川県の公立高校入試では、出願後、1回に限り志願変更が認められています。
 2024年度公立高校入試の場合、1月31日(水)の夕方以降に出願倍率が発表され、2月5日(月)~7日(水)が志願変更期間となります。

 教育委員会の発表によると、2023年度入試では、前年より753名増の3,950名が志願変更の手続きを行いました。

 この志願変更は、ギリギリまで自分の得点力を見極めたうえで受験校を決めることができるため、特に合否ボーダー上の生徒にとっては非常に有意義な制度です。そのため、志願変更の決断については、直前まで熟考するご家庭が多くあります。

 また、志願変更期間中、各高校では出願者の増減を毎日発表しますので、例えば初日(2024年度なら2月5日(月))の動向を見て最終決断し、2日目または最終日に志願変更をすることも珍しくありません。

2024年度入試のスケジュールとWEB出願

 神奈川県公立高校入試では、2024年度入試から「神奈川県公立高等学校入学者選抜統合型インターネット出願システム」による出願(以下、「WEB出願」)が導入されます。

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 前年は中学校を通しての郵送出願がメインでしたが、WEB出願になったことで、中学校も「願書を回収してチェックしたうえで各高校に郵送する」等の手間がなくなります。また学校が休みの日にも出願が行えるのは、生徒やご家庭にとってメリットが大きいと言えます。

 また、受験生の個人情報や写真については、出願期間前に受験生が入力し、事前に中学校の担任の先生が確認する流れになっており(志願者アカウント作成)、出願期間の中学校のチェックの負担が大きくならないようになっています。

 志願変更も、これまでは ①中学校で書類を受け取り、②その後、変更前の高校に行って書類をもらい、③さらに変更先の高校に行って書類提出、という受験生にとって負担の大きい手続きでしたが、WEBでの申請に変わります。
 志願変更期間は例年通り2日半ですが、WEB申請によって受験生の負担は大幅に軽減されます。なお、志願変更にあたっては、受験生からの申し出に対し、担任の先生がシステム上で「許可」をする必要があります。

 なお、出願も志願変更も、締切までにシステム上で担任が申請内容を「確認」し、中学校長が「承認」する必要があるため、例えば「締切3分前」等の手続きは時間的に厳しいと考えられます。

*2024年度 入試スケジュール
・事前入力(出願サイトのアカウント作成・志願情報作成) 1月4日(木)~
・出願 1月24日(水)午前0時~1月31日(水)正午
・志願変更 2月5日(月)午前0時~2月7日(水)正午
・学力試験 2月14日(水)
・特色検査 2月15日(木)・2月16日(金)
・合格発表 2月28日(水)

出願や志願変更に対する中学校からの制約

 各中学校で中3生への進路指導が本格化した秋以降、受験生の保護者の方から様々な相談をいただいています。
 その中には中学校の指導スタンスに関するものも多く、例えば、

●「出願は初日に必ず手続きするようにと言われた」
●「中学校が志願変更をしないよう“圧”をかけてくる
●「先生から、志願変更は初日しか受け付けないと言われた」
●「志願変更は前の週までに中学校に伝えておかないと認めてもらえない

といった、出願や志願変更に対して中学校が何らかの制約を設けているという相談です。

 今年度に寄せられた、具体的な事例をご紹介します。

ケース1 横浜市立H中学校

 出願校は1月9日(火)までに決めて学校に用紙を提出するように言われた。

※出願は1月24日(水)からですので、半月前に出願校決定を強いられています。この時期は各塾とも模試が頻繁にあったり、業者模試もあるので、ギリギリまで学力を見極めたいという生徒も多く存在します。

ケース2 横須賀市立M中学校

 出願校は1月11日(木)までに決めて学校に用紙を提出するように言われた。

※ケース1と同様です。

ケース3 横須賀市立K中学校

 公立受験校の「最終決定を、1月9日(火)の最終三者面談」とする旨が進路説明会資料に記載されている。

※ただし、中学校は問い合わせに対し、「9日以降の受験校決定も問題ない」と回答しています。

ケース4 横浜市立K中学校

 出願校の校内確認は1月15日(月)~19日(金)とし、「その後の変更は不可」とアナウンスされている。

※「変更は不可」というのは、出願までの期間のことだと思われますが、再考の余地を与えない非常にきつい表現です。

ケース5 茅ヶ崎市立E中学校

 出願校を1月10日(水)までに用紙に書いて提出することになっている。志願変更は初日しか受け付けないと言われた。

※志願変更において、初日の各校の倍率を見てから検討することができなくなってしまい、生徒に不利益を与える可能性があります。

ケース6 茅ヶ崎市立S中学校

 「出願校は1月10日(水)までに用紙に書いて提出すること」「志願変更はなるべく初日にするように」と言われた。

※ケース5と同じ市内の学校です。志願変更は「なるべく」なので、2日目以降の選択肢も一応残されています。

ケース7 川崎市立M中学校

 「出願、志願変更ともに初日に手続きを」と言われている。学校の先生が「(WEB出願は)自分たちも初めてで手探り状態。正直昨年までの方が楽だった…」と愚痴をこぼしていたという話も。

※出願期間は8日間、志願変更期間は3日間ありますので、初日に限定する理由はないと言えます。

ケース8 平塚市立K中学校

 「出願は初日か2日目、志願変更は初日に手続きを」と言われている。

※ケース7とほぼ同様の状況です。

ケース9 茅ヶ崎市立T中学校

 学校の先生が「俺たちが面倒くさいから(手続きを)なるべく初日に済ませるように」と言っていた。

※「なるべく」とそれ以外の日の手続きの余地を一応残しているものの、生徒にプレッシャーをかけています。教育委員会の方も「『面倒くさいから』という発言は、事実なら非常に不適切だ」とおっしゃっていました。

ケース10 横浜市立K中学校

 出願は初日か2日目に。志願変更は2月2日(金)までに中学校に相談し、2月5日(月)までに三者面談を実施する。

※志願変更初日の各校の倍率を見てから検討することができなくなってしまいます。

ケース11 横須賀市立N中学校

 志願変更をする場合は2月2日(金)まで(変更の場合は三者面談を実施)となっている。

※ケース10と同様です。

ケース12 横浜市立A中学校

 出願や志願変更、私立高校の併願については、事前にレポート(見学や説明会に参加して書くもの)を提出してからでないと行えないと言われている。

※学校見学や説明会に参加した上での志望校決定は大切ですが、やむを得ぬ事情で参加できなかったという場合もあります。
 このように言われてしまうと、生徒が萎縮してしまい、説明会等に参加していない高校への受験を諦めてしまう可能性があります。

ケース13 横浜市立K中学校

 志願変更はできるだけしないで、と言われた。

※発言の意図は分かりませんが、志願変更は受験生の権利であり、変更させないようにしていると思われる発言は不適切です。

ケース14 横浜市立I中学校

 「今年はネット出願で手間がかかるから志願変更はできる限りやめてほしい、もしするなら全員初日にしなさい」と言われた。

※前年と比べて担任の先生が「手間」になるのは、システム上で「許可」を押すこと、変更先の高校名が正しいか「確認」するだけです。そもそも教員都合の発言であり、ケース9の「面倒くさいから」発言と同様、不適切です。
 また、この学校では「最終日だと志願変更できないかもしれないよ」「志願変更する人は少ないよ」などとも言われており、志願変更にネガティブな印象を植え付けようとしている可能性があります。

ケース15 相模原市立W中学校

 保護者が学校の先生から「手続きの初日は、仕事を休んで自宅にいてください」と言われた。

※出願か志願変更か不明ですが、学校の先生としては入力ミス等があったときにすぐに対応できるからという意図だと思われます。
 しかしながら、WEBの良さは夜でもできる点であり、最終日でなければ翌日でも修正可能ですので、ご家庭の協力は必要とはいえ、そこまで無理を強いる必要はありません。

 以上のケースは、ステップの一部のスクールから聞こえてきた事例であり、実際にはもっと多くの事例があるものと思われますが、これだけでもかなりの制約を中学校が設けているのがお分かりいただけると思います。

 上記以外の事例として、小田原市のある中学校では、先生が、

「倍率を見て志願変更を考える生徒は落ちればいい。直前になって志願先を変えた人で良い結果になった人を見たことがない」

とおっしゃったとのこと。

 この発言については、教育委員会の方も「事実であれば不適切な発言だ」との認識を示されました。

 また別の自治体の中学校では、志願変更の申し出を2月2日(金)までとしていましたが、保護者が学校にお願いして2月5日(月)中の申し出なら可としてもらったそうなのですが、後日、生徒が「担任の先生を困らせないように」と言われたそうです。

 この2つのケースで発言された先生の意図は分かりませんが、おそらく「志願変更をさせたくない」という意思が働いたのだと思われます。

※中学校からの制約について、前年(2023年度入試)の状況はこちらをご覧ください。

なぜ制約が問題なのか

 大前提として、県が公式に発表している日程を、中学校独自の判断で事実上変更すること自体がそもそもおかしいのは言うまでもありません。受験生として公平に認められている権利を一方的に制限することがあってはなりません。したがって、この制約に生徒(ご家庭)が従う必要はないということをまず申し上げておきます。

 そのうえで、ここでは制約があることによる生徒のデメリットについて触れたいと思います。

 上記のスケジュールの通り、1月から2月初めは、各塾で頻繁に模試が実施されます。また1月には参加者の多い業者模試もあります。それらの結果を見て、出願校を決めたり、志願変更をするかしないかを最終的に決める生徒もいます。つまり、出願の1週間前とか2週間前に「受験校を決めなさい」と言われても、まだ決めきれないのです。

 志願変更についても、2月2日(金)までの決断を迫る学校がありますが、4日(日)に模試がある場合もありますし、何より5日(月)の志願変更初日の倍率を見て決めることができません。また3日(土)・4日(日)の週末に家族で話し合いたいというご家庭もあるでしょう。

 受験校の決断を前倒しさせることは、十分なデータに基づく決定を阻害することにつながります。中学校の都合のために、生徒やご家庭が「熟考する時間」が制限されるのは、断じてあってはならないことです。

 そして、受験校の「決断」の締切が中学校によって異なることは、入試に向けて同じように準備する機会が与えられていないことになり、著しく公平性を欠くと言えます。

なぜ制約が行われるのか

 中学校側はなぜこのような制約を設ける方向に動いているのでしょうか。

 まず前提としてあるのは、「全員がミスなく出願や志願変更を終えてほしい」という思いです。たしかに締切直前に大量の手続きがあれば、中学校のチェックミスなどが起きる可能性も否定できません。ただ、「受験校に迷いのない」生徒もたくさんいます。そうした生徒は何も言わなくても早めに手続きをするでしょうし、「もう迷いのない人は早めに手続きをしてね」と呼びかけるのは問題ないでしょう。
 全員一律に縛ろうとすることで、受験校に悩む生徒をさらに追い込むことになるわけで、迷っている生徒には「きちんと対応するから安心してね」ということを明確に伝えることが必要です。

 志願変更については、まず「変更前に三者面談をして意思確認をしたい」という中学校もあります。「志願変更するなら事前に教えてほしい」というわけです。
 三者面談をしたいという思い自体は理解できなくはありませんが、2日(金)や5日(月)にしなければならない理由はありません。特にWEBになったことで、例えば6日(火)や7日(水)午前に三者面談を実施し、その場で保護者のスマートフォンから手続きをしてもらうこともできます。
 なお、最終的な受験校は生徒本人とご家庭の責任でお決めになることですので、あえて三者面談を義務付ける必要がないケースもあることを付け加えておきます。

 一方で、制度的な問題も存在します。

 出願も志願変更も、「締切までに校長による承認が必要」です。前述の通り、仮に「締切の3分前」に手続きが集中したら、中学校も困ってしまうのは想像に難くありません。このように「直前に手続きをされたら困る」という側面があるのは事実ですが、それは本当に「直前」の場合であり、「24時間前」とか「数日前」ではないはずです。
 ただし、この点に関しては、「生徒の手続き締切時間」と「校長の承認締切時間」を分けて設定するなど、制度の交通整理が必要だと言えるでしょう。

 また、「中学校から志願先高校への調査書の提出」が2月5日(月)~8日(木)となっています(提出方法は郵送または持参)。この期間に、中学校は全生徒の調査書を、それぞれの出願校に確実に提出しなければなりません。その中学校からの受験生がいるすべての高校に持参するのは難しいでしょうから、郵送が現実的です。
 つまり、志願変更者がいなければ、出願期間が明けた1月31日(水)午後から送付準備に取り掛かれるわけです。一方、志願変更者がいた場合はその生徒の調査書の送り先を変更しないとなりませんので、志願変更を推奨したくない思いが出てしまうのでしょう。

 また、志願変更は7日(水)正午締切で、調査書提出は8日(木)締切と、この間の日程がタイトなため、中学校としては志願変更は「なるべく早くさせたい」となります。

 ただし、これらはすべて中学校側の事務作業の都合によるものですので、生徒の権利を制限する理由にならないのは言うまでもありません

 なお、中学校が調査書を郵送する場合、普通郵便ではないため、7日午後の発送でも8日には高校に届きますので問題はありません。
 しかし、調査書提出の締切がタイトなのは、中学校側の緊張度を必要以上に高め、生徒への圧力につながりますので、スケジュールそのものにも改善の余地があると言えるのではないでしょうか。

教育委員会の見解

 ステップは、12月22日(金)に神奈川県教育委員会に対し、上記のような現状を伝えるとともに、そういう実状を把握し改善していただくよう、申し入れを行いました。

 対応してくださったのは、教育局支援部子ども教育支援課の3名の方です。なお、4月の申し入れの際は教育局指導部高校教育課の方とお話をしています(4月の申し入れ後、6月に中学校長への呼びかけをした旨のご連絡をいただきましたが、残念ながら状況に変化が見られなかったため、再度の申し入れとなりました)。

 ここでは申し入れの場でうかがった、教育委員会の方の見解をお伝えします。


中学校が出願や志願変更について、早めの締切を設けることについて。

教育委員会

事前に理由を丁寧に説明して皆さんに納得していただいていた、ということなら納得されるかもしれませんが、そういう事前の説明、お互いの確認、共有がなく、急に「これはダメです」と言われても保護者やお子さんたちが納得できないのは理解できます。

最後、本当にどうしようか迷っているお子さんへのお声がけであったり、配慮っていうのが至っていないのかなと。

保護者の方も進路について非常に神経をつかって対応されていますし、お子さんの将来もかかることなので、やっぱり丁寧な対応が求められる部分だと思います。
学校としても意図があって言っているのだろうけれども、そこの合意形成が家庭とできていないのかなという風に思いますし、そこは丁寧な対応であったり、家庭からの納得をしっかり得て進めていくということはすごく大事なのかなと思います。

(なぜ早い締切を設けているかについては)
その中学校に直接聞いたわけではないので(分からない)。

「どの生徒も同じように公平に受験に向けて準備する機会がそもそも与えられるべきではないのか」という問いに対して。

教育委員会

はい。

「例えば『初日に出願手続きを』と中学校がおっしゃっていたとしても、『うちはどうしても決められません、だから週明けの29日(月)にさせてほしい』というご家庭に対して、それを中学校が認めないということはないですよね」という問いに対して。

教育委員会

それはその子の学習権を奪うことになりますから(ありえない)。

「志願変更で中学校が出した日程通りに決められないご家庭に対して、志願変更を中学校が許可しないのは認められませんよね」という問いに対して。

教育委員会

事前の説明と共有、合意形成ですよね。とはいえ、「やっぱり直前で」というときは個別対応というのが、求められると思います。

(上記の続き)「合意形成が大切ということだが、秋の保護者会などで中学校側からスケジュールについて話があったとしても、学力がどうなっているのかは直前になってみないと分からない。いざ土壇場で志願変更をしようかとご家庭が判断されたときに、例えば土日で家族会議をして決めたいと思ったら5日(月)にしか学校に伝えられない。そのときに中学校が『2日までに申し出てと伝えていたわけだから承認しない』とおっしゃったとしたら」という問いに対して。

教育委員会

学校側からは事前に丁寧に説明してご理解いただいた上で、「このように進めていきます。でもどうしてもというときには個別に対応させていただきます」という、そこに尽きるのかなと思います。

一人ひとりにあった教育的ニーズを届けるということで、本当、一人ひとりですから、一人ひとりに対応していくということに尽きるかなと。

(上記の続き)「一人ひとりの生徒・ご家庭の思いをきちんとくみ取って対応するということですね」という確認に対して。

教育委員会

はい、そうですね。

同じ中学校内でも先生によって(締切の日など)おっしゃることが違うことについて。

教育委員会

各先生が同じように説明できないのはよくないと思います。

「倍率を見て志願変更する生徒は落ちればいい」「教師が面倒だから」といった先生方の発言について。

教育委員会

事実であれば本当に不適切な発言であると思います。

志願変更の事務作業の負担が大きい」という声は中学校からあがってきているか、という問いに対して。

教育委員会

日程的にタイトで、ミスが起こりやすいといった声は来ていません。入試全般に関することは高校教育課が担当していますが、子供教育支援課の進路担当のところには直接そういった声は来ていません。


 以上が主なやりとりになります。
 教育委員会の方は、「中学校の考えもあると思うので、それも聞きながら受け止めたい。高校教育課と情報共有させていただきながら、考えていきたいと思います」とおっしゃっていました。

 この申し入れにより、生徒・保護者はもちろん、中学校の先生方も含め、皆がストレスが少ない状態で入試に向かっていけるような改善がなされることを期待しています。

申し入れに同行した阿部みどり弁護士(ステップ社外監査役)のコメント

 入試スケジュールの周知については、「受験先が決まっている人は早く手続きをしてほしいけれど、県から発表されている期間内は、出願や志願変更の申請はできるんだよ」というのを、中学校が丁寧にわかりやすくはっきりと伝えてあげないといけないと思います。

 そして、仮に、制度運用上、中学校の事務処理の問題がもしあるのであれば、学校現場の声を教育委員会が吸い上げて、中学生が平等に出願や志願変更を行える環境を整えるべきと思います。

最後に

 出願および志願変更に制約を設けている事例は、今回紹介した以外にも多くあります。前年の状況を見ますと、生徒や保護者から強く要望されたり抗議されたりした場合には、中学校は「しぶしぶ」対応しています。
 しかし、本来は制約があったり、先生が「志願変更をなるべくしないように」と発言したりすることが“異常”であり、すべての生徒が募集案内により定められた期間内であれば自由に出願や志願変更が行えるのが“普通”の状況です。

 教育委員会の方も、「生徒や保護者にあらかじめ丁寧に説明して皆が納得することが必要」とおっしゃっていましたが、保護者会等で質疑すらなく一方的に伝えたり、また進路通信等の書類やお知らせを配布しただけで説明したことにされているケースがあるのではないでしょうか。横暴とも言える伝え方が行われている一部のケースを見ると、そんな思いすら出てきてしまいます。

中学3年生の生徒、保護者の皆さんへ

 入試のスケジュールは「募集案内」や「志願のてびき」で公式に定められています。そして同じルールで入試に臨む権利があります。教育委員会も「一人ひとりを大切にすること」「個別対応」の必要性をはっきり述べられています。

 これから1月の学習状況を受けて、受験校に悩みが生じた場合、中学校から決断を急かされても、

「悩んでいるため、家族でも話し合って〇日に決めたいので、それまで待ってください」

とはっきり伝えましょう。県が定めている期間内であれば問題はないのです。大事な決断に際し、焦ってもプラスになることはありません。

 それに、中学校の先生も、皆さんが真剣に悩んで受験校を決め、全力で入試に立ち向かうことを望んでいるはずです。本当に皆さんのことを考えてくださっている先生ならば、ルールにそった皆さんの出願や志願変更を理解し協力してくださるはずです。

 中学校側の不安やタイトな作業日程というのも理解はできますが、在籍中学校によって生徒が不利益を被るのはあってはならないことです。進路決定の考え方はご家庭により様々ですから、中学校の判断一つでそれが制限されることがないように願っています。

 なお、生徒人数の多寡にかかわらず、原則的なルールに即した対応がきちんと行われている中学校も多数あることを、最後に付記しておきます。

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