思い出の浅草「蛇骨湯」へ

 人々が労働に勤しむ平日の昼間から、銭湯で体を流し一杯飲む、大人のエンターテイメントを描いた『昼のセント酒』。この明るいうちの銭湯、そしてビールに3年ほど前から憧れ、今ではこのドラマや他の漫画などで紹介された銭湯に足を運ぶのが趣味となり、その数もだいぶ増えてきました。
 その中で、初めて訪れた銭湯が浅草の蛇骨湯。ここで銭湯の良さを体感したからこそ、今でもこうして魅了されているといっても過言ではありません。そんな思い出の湯屋が、再開発に伴い5月いっぱいで江戸時代から150年以上続いた歴史に幕を下ろすということで、先日友人とともに足を運びました。

 浅草寺から徒歩5分ほど。国道462号に面した細い通りに見える緑に白字の看板。さらに奥まった路地を進んでいくと右手に見えるのが蛇骨湯です。歴史ある銭湯ですが、外観は宮造りではなく、ビルの一階に入っていて建物や内部も改装されています。一般公衆浴場料金460円を払って更衣室へ。さすがは浅草。外国の方も数人訪れていました。
 浴室に入るとまず目を引くのが、男湯から女湯にかけて描かれ、荘厳さをも感じさせる富士山の壁画。一般的な銭湯のペンキ絵ではなく、より繊細なタイル絵です。明け方を描いたものなのか、そこにある富士山は相変わらず神々しい。
 さらに人々を惹きつけるのが、飴のような薄茶色の天然鉱泉。すべての浴槽、そしてカランから出るお湯や水、シャワーにまで、ふんだんに温泉が使われています。肌触りは滑らかで、身体を優しく包み込みます。
 内風呂でジェットや電気風呂を楽しんだら、露天風呂へ。庇と周囲のビルによりほとんど青空を拝むことはできませんが、外気に触れながらの入浴はまた格別。休息用の丸椅子に腰掛けながら、庭石や小さな滝、池を泳ぐ色鮮やかな鯉を眺めるのも風情があります。ここでの入浴はこれが最後と思うとなんだか感慨深くなり、思わず長湯。普段なら滞在時間は長くて30分のところ、気づけば1時間も経っていました。

 風呂上がり、身支度をすませたら喉の潤いを求めて周辺散策。とある路地を入りかけたところで後ろから「メニメニピーポー、ドリンキング、ビアー」「ディス、ストリート、ネイム、ホッピーストリート」と浅草車夫の片言イングリッシュ。と同時に思わず惹かれる「ビアー」「ホッピーストリート」という響き。直ちにUターンして追うは車夫の跡。少し歩くと両サイドに立ち並ぶ数々の居酒屋。しかも日はまだ明るく絶好のビアータイム。まだ平日の4時半だというのにホッピーストリートはメニメニピーポーで賑わいを見せていました。
 その中でクジラとモツが味わえる店へ。はじめのオーダーは決まっています。銭湯上がりには生ビール。やはり至高。そしてクジラの刺身やモツ煮込みなどに舌鼓を打ちました。雑多な雰囲気ではありますが、外の空気や賑わいを感じながら味わう酒とつまみ、何とも言えない良さがあります。加えて銭湯上がりということで、まさに至福のひとときでした。
 下町情緒溢れる浅草で、また一ついい思い出ができました。

(I.Y.)

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