トラブル続いた神奈川公立高校ネット出願 初年度の振り返りと、2025年に向けた県の取り組み(動画書き起こし)
神奈川県公立高校入試では、2024年(令和6年)2月の入試からインターネット出願が導入されました。
しかし、システムの不具合が多発し、メディアでも話題に。
次の2025年度(令和7年度)入試に向けて、県教委はシステム会社と不具合の再発防止に取り組んでいます。
今回は県教委やシステム会社への取材も踏まえ、2024年に起きたトラブルの状況と、2025年に向けた県の取り組みをお伝えします。
*2024年10月14日公開の動画「<神奈川県公立高校入試>ネット出願トラブル、2025年は大丈夫か?【学習塾ステップ】」を記事として再編集したものです。
皆さんこんにちは。ステップ ティーチング・アシスタントの中山です。
ステップ中学部運営本部の井村です。
令和6年度(前回の入試)から、神奈川県公立高校入試のインターネット出願が始まりました。
その際にさまざまなトラブルが発生したのを、メディアなどを通じてご存知の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、「これから迎える令和7年度入試では大丈夫なのか?」、神奈川県教育委員会とシステム開発会社への取材も踏まえてお伝えしていきます。
出願時のメール登録に関するトラブルについて
まず、出願までの流れと、その際に発生したトラブルについて確認していきます。
まず、1月4日から出願サイトの利用が開始になり、
この日から志願者のアカウントを作成したり、受験生の情報やメールアドレスを事前登録できるようになりました。
実際の出願よりも前に、いろいろと事前準備をしておけるということですね。
しかし、この登録をする段階で、1つ目のトラブルが発生します。
中学校の冬休みが終わって、登録者が一気に増えた1月9日に不具合が顕在化しました。
システムから「@gmail.com」のアドレス宛てにメールが送信されないという問題が起きたんです。
Gmailを使ってアカウント登録をした際に、その確認メールが届かなかったということですね。
報道によると、1月9日から10日にかけてシステムから送信しようとしたメールは2万3685通でしたが、そのうち送信できたのはわずか3.38%の約800通。
2万2800通以上、割合にすると97%近くのメールが届かなかったということです。
また、送信できたメールも、届くのに十数時間かかったケースもあったそうです。
登録の完了メールが来ないと心配になりますよね。
受験生の保護者に当時の心情を聞いてみました。
「アカウント登録の際、Gmailが使えなかったことには困りました。中学校が決めた出願スケジュールが割とタイトな中、問い合わせ先の神奈川県のヘルプデスクにも電話がなかなか繋がらず、本当に焦りました。」
「待てば使えるようになるかもと思いましたが、またトラブルが起きるのではと思い、新たにアドレスを取得しました。」
神奈川県公立高校ネット出願、保護者の感想は? – Gmailが使えないトラブル、学校の対応、サイトの操作性など
スケジュールがタイトというのは、以前にステップYouTubeチャンネルや進学情報ブログでも取り上げた、中学校からの指導の話ですね。
中学校が公立受験校の最終決定を、実際の出願期間よりもだいぶ前の日程で締め切ったり、志願変更を行わないよう指導したことを指しているのかと思います。
この件に関しては、2023年12月22日と2024年7月16日に神奈川県教育委員会に申し入れを行いました。
とにかく、メールアドレスを登録できないことによる不安はとても大きかったと思います。
このトラブルはいつ解消されたんですか?
トラブルが発生した10日後の1月19日に、教育委員会より「不具合が解消された」と発表されました。
しかし、出願開始日の24日には、再度同じトラブルが発生しました。
Gmailで登録していたアカウントで、メールが受信できなかったということですね。
そうなんです。このトラブルを受けて、県教委は翌日の25日に、システムに入れない受験生623人を対象に、県教委が管理するメールアドレスを提供することで対応しました。
では、出願開始翌日の25日にこのトラブルは解消されたということですね。
そして、1月31日に出願が締め切られましたが、このとき中学校側の処理の問題で、3名の受験生の出願処理が間に合わなかったそうです。こちらは高校側が追加で受け付けまして、無事に受験することができました。
これはシステムのトラブルではありませんが、中学校がシステムに慣れていなかったことが原因ですね。
その他のトラブルについて
他にも何かトラブルがあったんでしょうか?
まず受検票を印刷する際に、一部のタブレット等で文字化けが起きました。
Web出願では、受検票は高校から送られてくるのではなく、各受験生が自宅などでプリントアウトしなければいけないんですね。そのときに文字化けが起きたということです。
そして、受検料や入学金の支払いに関するトラブル。
受検料を支払った後に再度支払ってしまうケースや、合格発表直後の入学金の支払いの際、アクセスが集中して画面が固まったり、入金完了がすぐに表示されないというトラブルもありました。
受検料を二重に支払ってしまうというのは、どういったことでしょうか?
支払いをしたにもかかわらず、システムの不具合で画面が入金済みにならず、再度入金することで二重納付になりました。また、入金後にブラウザの戻るボタンを押して前の画面に戻ってしまい、再度入金画面が表示され、そこで改めて支払ってしまったケースもありました。
出願が始まる前から、入試が終わった後までトラブルが続いていたんですね。
プログラムの不具合やサーバーへの過剰な負荷などが原因だったとされています。
トラブルに対し、システム会社と県教委は…
システムを開発した会社(福井県福井市)に、発生したトラブルの原因究明と対策についてうかがいましたが
「個別の回答はしておりませんので、神奈川県を通しての回答とさせていただいております」とのことでした。
神奈川県教育委員会にも取材をしました。
対応してくださったのは、神奈川県教育委員会教育局指導部高校教育課入学者選抜定員グループの方です。
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発生したトラブルの原因究明と対策は実施されましたか?
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はい。システム会社から提出された報告をもとに、システム改善等をしています。
また、具体的な内容を6月下旬の神奈川県議会・文教常任委員会へ報告しました。
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深刻だったメールのトラブルは回避できますか?
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2024年度入試では、アカウント作成の際に確認メールが来ない不具合がありましたが、2025年度入試では2次元コードを読み取ったら、そのまま登録に進んでいけるようにします。認証コードもSMS(ショートメッセージシステム)で受け取れるようにします。SMSがない方はメールで受け取れるようにし、システム側も信頼度の高い公的なドメインを利用する形にします。
2024年度のシステムは独自ドメインでしたが、設定が不十分だったため、システムからのメールが迷惑メールと判断され、届かない不具合が出ました。それを回避する方策ですね。
また、SMSを利用することで、アカウント作成時のメールのやり取りを減らすという対策も取ったということです。
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合格発表日にアクセスが集中したことによる不具合への対策は?
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サーバーの負荷を分散するために、データベースサーバーを複数割り当てるなど、サーバー環境の構築を行います。
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そのほか、何か対策は行われましたか?
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11月頃に練習サイトを稼働させます。
昨年も中学校の職員用の練習サイトがありましたが、今年はそれを生徒の皆さんにも利用していただけるように調整しています。
本番サイトは12月に稼働させる予定です。
事前に受験生が練習サイトを使えるのはいいですね。
そうですね。本番サイトを利用する際の安心感につながりますよね。
最後に、受験生は心配なく受験に臨めるかどうかうかがいました。
「不具合が出ないよう十分対策はしましたので、安心して受験してください」とのことです。
昨年度のトラブルへの対策がなされていることが伝わってきました。
対策が効果を発揮し、受験生や保護者の皆さんが安心して令和7年度入試に臨むことができるよう期待しています。
それでは中学3年生の皆さん、第一志望合格に向けてがんばってください!
動画でわかる 高校入試Q&A
学習塾ステップ公式YouTubeチャンネルで、「高校入試、ここが知りたい!」と題し、神奈川県の公立高校入試や、私立高校入試についてよくあるご質問にお答えしています。ぜひご覧ください。
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